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恩賜財団母子愛育会会長上村 一

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新しい生命の芽生えを喜びながら、一昔前のことを申し上げましょう。私はこの夏83歳を迎えます。大正14年(1925 年)に生まれた日本人は208万6千人、男が106万千人、女が102万5千人です。平成17年の国勢調査ではその年 80歳の人口は85万5千人、男が33万7千人、女が51万8千人です。この数が多いか少ないか人によって評価が 違うでしょう。私の気持ちでは良くぞ生きてきたものだとしみじみ思います。
 生まれてから年金をうけるまでの60年余りの昭和の時代は、日本の歴史でも波乱に富 んだ変化の多い時代でした。戦争前の生活水準は決して高かったとは申せません。保健 衛生の指標の一つ乳児死亡率をとっても、昭和9年恩賜財団母子愛育会が設立されたこ ろは出生千対125、生まれてきた赤ちゃんの8人に1人は初めてのお誕生日を迎える ことができなかったのです。私自身も乳児期に肺炎を、幼児期に疫痢を、青年期に結核 をというようにその時代の死因上位を占める病気にかかりましたし、その間に兵役に服 しました。母親を悩ますことが多かったですね。
 今生まれてくる赤ちゃんは生きていく条件や環境に恵まれています。平成18年の乳児 死亡率は出生千対2.6、この年に生まれた赤ちゃんが65歳まで生存する率は男が86% 、女が93%だと想定されています。生まれてくる子供が少ないと進学や就職も 楽だといえるかもしれません。しかし新しい時代には新しい問題があり、お母さん方を 悩まします。いろんな要因で初産の年齢が遅くなっています。私の母は20歳で私を産 み、私の妻は25歳で息子を産みました。今は妊娠と出産は一昔前のように哺乳動物の 自然の営みだと甘く考えることはできなくなってきました。周産期の健康管理には特に 気を配ってください。保健指導を受け必要な医療を受けることにためらいがあっては悔 いを残します。愛育班活動の活発な市町村では、出産経験のある婦人が皆さん方のご相 談に応じます。マタニティマークは埼玉県の愛育班の方が日ごろの仕事を通じて考え られた成果でもあるのです。
 恩賜財団母子愛育会は天皇陛下のご誕生にあたり、先帝昭和天皇の温かい思し召しにより 我が国の母子保健の向上を目指して成立された団体です。

せっかくの機会です。ホームページをぜひご覧ください。
http://www.boshiaiikukai.jp/

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